掲載された雑誌など
週末限定のメキシコで、皮が決めての絶品タコスを食す!!

メキシコとUSAの国境の町、エル・パソで愉快な夜を過ごしたことがある。 テキーラと音楽に酔いしれた深夜、洗ったような月が出た。 現地の老人に「日本では、月に兎が・・・」という話をしていると、老人驚いて「日本にも月があるのか?!」。

 さて、日本にも「エル・パソ」がある。 店内は小さな小さなメキシコ。 「内装もすべてメキシコから取り寄せました」と店主の鈴木啓道さん。 しかし、このお店、週末しか営業していない。その理由とは、店を始めた10年はメキシコ人の料理人がいたが、帰国。 

鈴木さん自身が独自のメキシコ料理を作ろうと「半年間、店を閉めて研究しました。 (タコスなどの)皮が出来なければ止めようと・・・」見事思い通りの皮を開発して再開。 しかし、鈴木さん自身も忙しく、すべてに手作りなので時間がかかる。以上が、週末しか営業できない理由である。

一番たいへんなのが、タコス、ケサディージャなど トルティージャの皮作りである。 それぞれに製法は異なるが、数種類のとうもろこしの粉を手で練り込む。「練れば練るほど美味しくなる」。香ばしさを保つように練り上げ、ちぎって丸め、一枚づつ手動のプレス器で伸ばし、フライパンで焼いてゆく。 <中略>

食べて驚いた。 タコスの皮のなんと香ばしく、しんなりとしていることか! 大袈裟でなく、私がこれまで食べてきたタコスの中では疑いもなく最高級の味である。鈴木さんの「自分が美味しいと惚れ込んだ味を出したい」という思いがダイレクトに伝わってくる。

伊丹由宇氏の人気コラム「こだわりの店」より



            
2006年 オズマガジン 2005年 講談社
エルパソのタコスが紹介された主な新聞、雑誌など